#9「四畳半神話体系」森見登美彦
読み易さ☆☆☆☆☆
面白さ☆☆☆☆☆
読む価値☆☆
湯浅政明監督のもとアニメ化し、「文化庁メディア芸術祭アニメーション部門」で大賞を受賞した、その原作小説です。同賞は1年に1回、その年最も優れていたアニメ作品に贈られる賞で、近年では「君の名は」や「この世界の片隅に」古くは「時をかける少女」や「もののけ姫」が受賞している権威ある賞です。
大学3年生の主人公はくだらないことで2年間を棒に振ってしまったことを後悔しており、「もし入学したての時期に別のサークルに入っていれば、薔薇色のキャンパスライフが送れたはずだ…」と考えます。
全4章で構築されており、それぞれが異なる平行世界における主人公の生活を描いています。登場人物や舞台などほとんどの要素は共通で、ただ「主人公が入ったサークル」のみが違う物語が展開されます。平行世界モノ、と呼べるでしょうが主人公が世界線を横断することはなく、SFという印象は受けません。どのサークルに入っていようが結局残念な学生生活を送ることになる主人公を読者が笑う、コメディ作品とみるのが適切でしょう。
純文学の主人公さながらの重厚な言い回しから繰り広げられる主人公な残念人間っぷりが笑いを誘い、軽快に読み進むことができます。「本人いたって真剣に馬鹿げたことをする」という笑いの基礎を抑えているのでしょう。
森見登美彦さんは読み易さ、面白さにおいて群を抜いた小説家なので、あまり読書が得意でないけど小説を読みたいという人に是非おすすめです。
蛇足
文庫版巻末の佐藤哲也さんによる解説が完璧すぎてレビューしづらかったです(´∀`; )
作品の解説も森見登美彦さんの解説もかゆいところに手が届くような言葉で語り切られており、自分でレビューを書く内容が見つからなくて困ったものでした。四畳半神話体系のアニメを見たという人や、森見登美彦さんの小説が好きだという人で、未読の方は是非この解説を読んで欲しいですね。
私事ですが、最近レビューを書くのが難しいと感じることが多いです。読書すること自体は今まで以上にやる気がでているのですが、レビューで何を書くべきなのか、何を書いてはいけないのかと悩みがちで、なかなか筆が進みません。レビューするのも楽ではないなと感じる今日この頃。義務感を持って続けていこうと思います。それでは今回も、お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m