年50冊小説を読まんとする若輩のblog

それ以上でも以下でもなく。

#10「リバース」湊かなえ

読み易さ☆☆☆☆

面白さ☆☆☆☆

読む価値☆☆☆

 

映画化された「告白」で有名なミステリ作家、湊かなえさんの小説。「リバース」は昨年ドラマ化されました。

 

主人公と大学のゼミでの仲間5人は、全員で出かけた旅行中に、その内の1人、広沢を自動車事故で死なせてしまう。彼らは無理やり飲酒運転をさせたことに負い目を感じ、このことは誰にも話さないという約束を交わした。それから3年経ったある日、彼ら全員の元に「お前は人殺しだ」と糾弾する匿名の告発文が届く。この手紙の主は誰なのか? 主人公による犯人探しが始まるのであった。

 

読者も犯人は誰か?と思いながら読むことになりますが、この小説の特殊なところは「犯人」が別の意味で2人いることでしょう。つまり、告発文を送りつけてきた犯人と、あの日広沢を本当に殺した犯人とです。その2つの犯人探しを破綻することなく同時に行いつつ、クライマックスで驚きの真実が明かされる構成は、特別評価できるものでしょう。

また、湊かなえさんは女性ですが、元ゼミ生5人の男同士の仲間関係や優劣意識といったリアルな描写を描いており、その想像力と人間理解は相当なものです。ミステリーですが人をきちんと描いた作品という印象を抱きました。

 

構成や描写も評価できますが、個人的には単純にミステリーとしてとても面白かったです。犯人は誰か?という謎を追い、好奇心に駆られてページを捲るという感覚は久しぶりなものでした。小説に興奮を求めたい人におすすめであり、夢中になりたい気分の人におすすめな小説でした。

 

 

蛇足

 

主人公が割と自分に似ていたため、共感という意味でも面白かったです。具体的には、華やかな人といると劣等感を感じてしまうところや、友人に対しての姿勢、コーヒーが好きなところなど。本当は面白さの評価は☆5でもよかったのですが、個人的な共感補正で評価ブレさせてはならないと思い、一つ下げています。

 

「共感」は小説の面白さの多くを占めるものだと思いますが、あえてそれを求めるものではないと思っています。もちろん共感できる小説は面白いですが、共感できない小説も知らない世界を教えてくれる案内人としての意義があると思うからです。自分がジャンルをあえて定めずになるべく異なるジャンルのレビューを書こうとする理由もそうだったりします。

 

いずれにせよ、共感は個人的なもので、公正を期待される評価には影響させてはいけないと思うので、今後もそうしていきます。お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m