年50冊小説を読まんとする若輩のblog

それ以上でも以下でもなく。

#8「暗夜行路」志賀直哉

読み易さ☆☆☆☆☆

面白さ☆☆

読む価値☆☆☆☆

 

戦前戦後を生きた白樺派の作家で、「小説の神様」と称される志賀直哉さんの代表的な長編。一人称の純文学らしい純文学で、主人公謙作の内面的変化が主軸となっています。実の父ではない父との不和を描いた前編と、不義を犯した妻との和解を描く後編で構成されています。

 

内面を軸とする物語のため外的発展は少なく、ユーモア要素も乏しいですが、不思議と読むことが苦になりませんでした。それは、志賀さんの簡潔で無駄を極力省いた文体と、神様と称される情景描写力により、読み手に滞りなく場面のイメージを送り込んでくれるからでしょう。

お手本のように優れた文章である反面、独特で味のある表現といったものが少ないので、面白味にはかける気がしました。

とはいえ、最も美しい日本語と言われる志賀さんの代表作であり、多くの人にとって読む価値のある作品だと言えるでしょう。

 

蛇足

 

主人公の逗留先の一つとして広島県尾道が出てきます。尾道はおだやかな海と急な山に挟まれた観光地であり、2015年には文化庁により第1回日本遺産に登録された歴史ある町です。

そこには志賀直哉が暗夜行路を執筆する際に実際に逗留していた古民家が現存しており、観光スポット一つとなっています。

さて、ブログ主も一度その古民家に訪れたことがありまして、実はこのブログのヘッダーにしている窓辺の画像こそ、志賀さんが執筆に使っていた部屋だったりします。あんな穏やかで心地よい場所で小説を書けるなんて最高でしょうね。

皆さんも広島に旅行される機会があれば、尾道に行ってみることをお勧めします。以上、尾道観光PRをお届けしました( ̄∇ ̄)